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Twitter300字SS(2/4・お題「氷」)

Twitter300字SS(2/4・お題「氷」)

オリジナル
和風怪異譚と移民船SF(#科楽倶楽部)


氷雨の夜


 山に氷雨が降る晩、炭焼小屋の囲炉裏でおんじは甘酒を煮る。
 しとしとと土に凍みる冷たい雨のせいで、山の墓地で亡き人が目を覚まし、明かりに吸い寄せられるように暖を求めて、この小屋にやってくるらしい。
 彼等を再び寝かすにはこれを飲ますのが一番だと、おんじは匙で鍋をかき混ぜる。
 少しずつ減っていく中身に怯え震えていると、戸を見たおんじの顔が綻んだ。
「おお……来たか……さあ、火の側でおあがり」
 甘酒を湯呑みに注いで囲炉裏端に置く。
「……そうか相変わらず、おっかあがうるさいか……儂がもうすぐ入るでの。もう少しの間、あしらっておいておくれ」
 痩せこけた腹を見せた後、減る湯呑みの甘酒に、おんじのしょぼくれた目が潤んだ。





メッセージボトル


 出航の日がやってきた。
 回顧趣味だと予算がほとんど付かなかった移民船を氷でもって補強し、中古のロボットからAIを移し、寄付金で買った燃料を補助エンジンに注入する。
 船の記録から探し出した百年前の航路と、惑星開拓の記録をインプットして船首を外宇宙に向ける。
『よい航海を!』
 衛星軌道から下がり続け、移民政府から破壊命令が出ていた船がゆっくりと星を離れ動き出す。
 目的地は私達の故郷だという青い星。危機に直面していた星が、未だあるかは解らないし、いつ着くかも解らない。
 それでも、自分達がここに生きていることを伝えたい。
 巨大なメッセージボトルが宇宙の海を越えて、同じ故郷の誰かに届くことを祈り、私達は見送った。
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